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「今、私が会いたい人」ただ一つのシーグラスや貝殻から生まれる、飽くなき表現|moonさん

「今、私が会いたい人」ただ一つのシーグラスや貝殻から生まれる、飽くなき表現|moonさん

こんにちは。クリーマの森です。

昨年クリーマに入社し、デジタルマーケティングを担当しています。今回は普段の業務を離れ、アートに縁がなかった私が「アートって楽しい!」と感じるきっかけとなった、moon:小向さんにインタビューさせていただきました。

 

人と家の風景や、海の風景、ワイングラスから宇宙まで、様々なモチーフや風景が描かれたmoonさんのアート。本物のシーグラスや貝殻が生き生きと存在を放つそのアートは、どれも個性的で、見ているだけで思わず笑みがこぼれるものばかりです。

ほかにはない、ユニークな作品を手がけるmoon:小向さんに、ものづくりを始めたきっかけや、心くすぐるアート作品たちがどのようにして誕生しているのかお伺いしました。

▲ 写真左:moon:小向さん、右:クリーマ森

子どもの頃からものづくりに触れながらも、一度は別の道へ

――ものづくりやアート活動を始めたきっかけは何だったのでしょうか

子どもの頃から絵を描くことが好きで、ガラスビーズを使ったアクセサリー作りなんかもしていました。ものづくりが身近だった背景には、家族の存在が大きかったと思います。

母は洋裁が得意だったので、洋服や手提げバッグを作ってくれて日常的に手作りに触れていましたし、父や兄はかなりの読書家で家の棚には様々な本がぎっしり並んでいて…… その影響から私も本を読むようになり、今私が行っているシーグラスアート制作にも繋がる、“想像を膨らませる”ということが身についたと感じています。

 

高校では美術部でデッサンや油絵を、大学は美大に進学しグラフィックデザインを学びました。でも、その後の就職では美術やデザインの道には進まなかったんです。

デザイン系の仕事はとにかく多忙だと聞いていたので、バンド活動(ギター)やバイクなど趣味の時間をしっかり確保できる仕事に就きたいと思っていました。

▲ 本格的にバイクを趣味としている小向さんは、バイク雑誌で大きく取り上げられたことも

しばらくしてから「やっぱりデザインの仕事をしたい」と考えるようになり、会社を辞め専門学校に通い、再度グラフィックデザインを学び直したんです。そこから現在に至るまで、スタイルを変えながら20年ほどデザインの仕事を続けています。

幼少期の思い出が繋いでくれた、シーグラスアートとの出会い

――長らくグラフィックデザインに関わっていたとのことですが、シーグラスアートを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

幼少期は青森県八戸市で過ごしていました。そこは海がすぐ近くで、岩場で貝殻などを探して遊んでいました。また、父が出張先でお土産に貝殻を買ってきてくれて、幼い頃から貝殻を集めることが好きだったんです。大人になってから「シーグラス※」というものを知り、旅行に行くたびに拾い集めるようになりました。シーグラスはどこにでもあるわけではなく、流れ着く場所があるので、事前に調べてから行きます。

 

最初はただ集めるだけで「シーグラスをアートにする」ということまで考えていなかったんです。そもそも、そんなアートがあることを知りませんでした。たまたま何かで「シーグラスアート」の存在を知り、「これまで学んできたデザインのスキルを活かせるのでは」と思ったのが制作を始めたきっかけです。

 

※シーグラス:海岸などで見つかる、青や白、緑色のガラス片のこと。「海の宝石」とも呼ばれ、ビンなどのガラスが海流に揉まれながら海中で長い時を経て次第に角が取れ、曇りガラスのような風合いに変化して波打ち際に打ち上げられたものが、私たちの手元に届きます。

あえて天然の素材にこだわり、材料から自分の手で探す

――使用している素材について教えてください

シーグラスには丸く均等に削れているものと、あまり削れていないものがあり、アート作品にするには丸く削れたガラスが適しています。色は白、茶色、薄いブルーが一般的で、黄色や赤はかなり珍しいものです。また、シーグラスには天然物と人工物があり、人工物はガラスを機械で研磨するなどして手を加えたもので、海で自然に洗われた天然物とは異なります。

▲ 小向さんが集めた天然シーグラスの一部

シーグラスは今も自分で集めています。先日も江ノ島に行って、夫と一緒に海岸を歩き、シーグラスや貝殻を集めていました。ちょっと場所が変わると取れるものが全然違うのが楽しくて、2人で夢中で下を見ながら、いつの間にか海岸を端から端まで歩いていました(笑)

▲ 実際に海岸で集めている様子。写真は小向さんの旦那さま。

天然のシーグラスには削りが甘いものもありますが、そんな個性も活かしながら作品にしています。例えばこの白いシーグラスの角は、ヨットの帆の形を表すのにぴったりでした。

貝殻・ストーン・シーグラスアート〈ヨット〉

シーグラスや貝殻のほか、石もまた素材として魅力的です。見つけた瞬間にイメージが湧くこともあり、「これは使える!」というものを集めています。最近は、シーグラスや貝殻、石などを収集できる海を目的地に、旅行へ行くことも多いです。

▲ 収集した石の一部

唯一無二の素材への愛と、膨らむ想像力から生まれる作品たち

――moonさんの独創的な作品たちはどのようにして生まれるのでしょうか

小鳥シリーズなんかもそうですが、先に作りたい作品のイメージをもって、そこに素材の形を当てはめることが多いです。私がこだわっている点としては、鳥のくちばしや足など被写体の細かいところもペンで書かず、シーグラスや石、木、貝殻など、天然素材の形状を活かして作ることです。

シーグラスアート〈2羽の小鳥・ミニ〉

カクテルグラスのシリーズでは背景を黒にする、という点にもこだわりました。シーグラスをカクテルに見立てた作品の多くは白背景で、黒は殆ど見かけません。カクテルやバーを想像したときにはやっぱり黒、という印象があり、カクテルが宝石のように輝いているイメージで黒背景にしたかったんです。

ですが、黒背景にただシーグラスを置いてしまうと素材が透明なので黒く沈んでしまいます。どうしたら素材が映えるのか試行錯誤し、素材部分のみを白抜きすることで美しく見せることに成功しました。

▲ カクテルシリーズを制作する様子。色や形のバランスをみながら何度も並べ替え、一度配置を完成させてから時間をおいて、最終調整するそうです。

面白い形を見つけるとその素材に合わせて作品をつくることもあります。貝殻は複雑でユニークな形をしているものが多いので、「これで何が作れるのかな?」とイメージを膨らませながら制作しています。

▲ ご自宅にある貝殻のひとつ。ユニークな形が想像力を掻き立てそうです。

「星を釣る人」という作品は、カットされた貝殻が木に見えるというところから作品のイメージが湧きました。対比として小さい人がいたら引き立って面白いんじゃないか?と思い、貝殻の空いている部分に人を配置したものです。

貝殻・ストーンアート〈星を釣る人〉

人が地面から離れた場所にいるため「はしごをかけよう」と思いつき、木ではしごを作り、さらにヒトデを星に、ウニのとげを釣り竿に見立てて「星を釣る人」という作品が生まれました。

このように手を動かしながら徐々に物語を作り上げていくスタイルは、幼少期の読書経験から得た”想像を膨らませる”という経験が自然と形になっているのではないかと思います。

素材そのものを活かすこと。見る人を惹きつける、面白いものを

――作品に対するこだわりを教えてください

なるべく天然素材を使い、その独特の形状を活かした作品に仕上げることです。人工のものは傷や欠けがなく綺麗ですが、私は海で洗われた自然のシーグラスだからこその形や色味に惹かれます。時に不完全、だからこそ無限の可能性を秘めていると思うのです。素材そのものを活かすことは難しいですが、そこが面白いところだと感じます。

――実は私が一目惚れしたのは、こちらの目玉焼きとベーコンの作品でした! 他にはないこのユニークなデザインが本当に可愛くて……。

▲ 左:シーグラスアート〈ビールとお肉〉、右:シーグラスアート〈目玉焼きとベーコン〉

一風変わったものを作るということも大事にしています。様々な方が手がけているシーグラスアートですが、私らしさやこだわりを活かした何か面白いもの、何か人とは違うものを作りたいと思っています。

素材の魅力を引き出せた瞬間が嬉しい

――どんな時にやりがいや喜びを感じられるのでしょうか

まず素材を収集するところから始まるのですが、綺麗なだけではなく、個性的で面白いものと出会えた瞬間に嬉しくなります。そこから作品の物語が始まり「さあ、どんなものを作ろう?」と自分でも何が出来上がるか分からない中で、素材に語りかけながら模索し、ぴったり形が収まり、ひとつの作品が完成したときに「やった!」と思います。素材の魅力を引き出せた瞬間が一番嬉しいですね。

貝殻・ストーン・シーグラスアート〈散歩、日傘をさす女性〉

「複雑な形や模様の貝殻の使い方にずっと悩み、スカートの表現としてピタッとはまった瞬間が嬉しかった!」と伺った作品(制作途中の仮置きしている状態)

今まで見たことのないような作品に挑戦したい

――今後はどんな作品づくりを目指していますか?

コーヒー好きが高じて、最初はコーヒー豆アートからスタートしました。それからシーグラスアートにしばらくのめり込んでいましたが、引き続きコーヒー豆アートの新作も作っていきたいと思っています。

また、素材はシーグラスだけにこだわることなく、貝殻や石、その他なにか面白い素材がないか、もっと視野を広げて自由に発想していきたいです。制作そのものが楽しいのはもちろんですが、「これは使える!」というようなアイデアや素材を発見した時が嬉しい瞬間です。

〈コーヒーピープル〉コーヒー豆アート

▲ 本物のコーヒー豆を使用したコーヒー豆アート

今後も、もっと素材を追及していきたいです。そしていずれは果物や野菜を寄せ集めた肖像画で有名なジュゼッペ・アルチンボルドのように、貝殻だけで人物を描くなど奇妙で面白いものを作ったり、空中に浮かぶ岩、顔が林檎になった人など、絵を見る人が戸惑うような絵を描いたことで知られるルネ・マグリットのような一風変わった、今まで見たことのないような作品にも挑戦してみたいです。

インタビューを終えて

冒頭でも触れましたが、これまでアートというものにあまり触れてこなかった私が初めてアートに魅了され、アートに対して”楽しい”という感情を持つきっかけとなったのがmoonさんの作品でした。今回のインタビューで実際に作品と制作風景を拝見し、作品に対する思いやこだわりを直接お伺いすることで、ますますその世界観に引き込まれました。

▲ 写真左:クリーマ森、右:moon:小向さん

「素材の個性を活かす」というこだわりをお伺いし、一つひとつ歩んできた道のりや見つけられた場所が異なる素材たちがmoonさんの手によってぴったりの新しい居場所に巡り合い、新たな個性を輝かせている作品だからこそ、こんなにも人の心を魅了し元気をもらえるんだ、と感じました。

ぜひ、みなさんもmoonさんの素敵な作品が詰まったギャラリーを訪れてみてください!

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