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「今、私が会いたい人」傷まで愛されるちゃぶ台を作りたい | 家具作家・85ファニチャーさん

「今、私が会いたい人」傷まで愛されるちゃぶ台を作りたい | 家具作家・85ファニチャーさん

はじめまして、Creemaでクリエイター活動のサポートを担当している會津です。

私の祖父が建築関連の仕事をしていたこともあり、私の実家には私が生まれる前から使っている家具があります。長年使っていると家具の一つひとつに家族との思い出が積み重なっていくんです。そんな愛着のある家具が好きで、Creemaでも自然と家具に目がいってしまいます。

 

そんな中で、ひときわ気になった作品がありました。それが、85ファニチャーさんの「癒されるちゃぶ台」です。

【サイズオーダー可能】癒されるちゃぶ台

▲ それがこちらの作品「癒されるちゃぶ台」

家具で “癒される” ってどういうことだ? と気になっていた私が、その真相を知るために、85ファニチャー・八反田さんにお話をお伺いしてきました!

▲ 工房にて、家具作家の85ファニチャー・八反田さん。とても気さくな方で、楽しくお話をお伺いさせていただきました

湘南の鵠沼海岸にある工房に快く迎え入れてくれた八反田さん。(ご本人からの提案により、以降は「ゴローさん」と呼ばせていただきます)

2年前に移転されたという工房に入ると、木材の香りが広がっていました。以前はダイビング用品の倉庫だった場所をご自身で改装されたそうです。1階はギャラリー、2階が作業場になっており、2階から木を加工する音が鳴り響いていました。

▲ 工房の様子。様々な道具・機械が並んでいます

一度は諦めたものづくり。後悔しない人生のためには、やっぱり家具作りが必要だった

「昔からものづくりは好きで、高校卒業時に家具屋になりたいと思ったこともあったんですが、当時はその道に進む選択はしませんでした。

 

きっかけは5年前に心臓の手術を行ったことでした。ちょうど2人目の子どもを授かったタイミングで、数%ですが死亡率のある手術で“死ぬかもしれない”と本気で思ったときに「自分にとってより愉快度が高いことはなんだ?」とアンテナをあげるようになったんです。

 

そんな中、D I Yで大きなローテーブル、カウンターデスク、ベンチ、ベッド、小上がりなどを製作するチャンスに恵まれ、改めて「ものを作り出すことの喜び」を噛み締めることができ、数を作っていけばなんとかなるな、と思うことができたんです。

そこで、やりたかった家具製作を始めることにしました。」

——大きな決断だと思うのですが、不安はなかったのでしょうか?

「輸入販売業を営んでいましたので、会社の副業的な位置付けで家具製作販売部門をスタートさせたんです。こういうと大袈裟に聞こえますが、私が使っていた6畳の部屋に、まず加工台を作ったのが第一歩でした。

サンプルを製作し、出品数1からの小さなスタートです。受注販売が可能なのは在庫を抱えずに済みますので助かりました。

このように小さくスタートしましたので、特に不安は感じませんでした。

お客さまにとっては、気軽にサイズなどをオーダーできるのも魅力なんじゃないでしょうか。

 

少しずつ作品数を増やし、少しずつ売れはじめていきました。それに伴い、徐々に工房を大きくして、スタッフも増やし、家具部門を別法人として切り離すことを決めました。一昔前だとハードルの高かった『好きなことを仕事にする』が身近になったのは、Creemaの存在があったからだと思います」

常識にとらわれず、素材の個性を活かした家具を届けたい

——杉を使った家具が多いと思いますが、杉の魅力って何ですか?

「一般的に杉は、傷がつきやすくて扱いにくいため敬遠されがちで、高級家具に使われることはありません。でも、だからこそ価格面で身近ですし、柔らかくて肌触りが良いという魅力があります。

家具素材としての一般的な価値は、お客さんからしてみれば関係のないことですし、家具としての完璧さではなく、それよりも使い心地の良さや自然な風合い、長く付き合えるかどうか、そんなところを求めてくださっているのだと思います。

僕としても、杉の個性を活かして、杉の柔らかさでしか出せないこの手触りを楽しんでもらいたいと思い使っています」

▲ 杉の魅力について教えてくれるゴローさん

「杉の魅力を最大限に表現するためにも、癒される手触りのための工夫は惜しみません。

仕入れた木材の節を一つひとつパテで埋め、やすりがけを繰り返し、時間をかけて形を整えています」

▲ ベルトサンダーでのやすりがけ
▲ 全て手作業で一つひとつ製作されています

仕上げのオイルの塗装では、あえて被膜を張らず、木材に染み込みやすいオイルを採用し、杉の肌触りを表現することを優先しているのだそう。

▲ 完成したちゃぶ台の表面

お客さまの声から生まれた “癒される” シリーズ

“癒される” 家具シリーズのポイントは、角を丸めたR面の仕上げ。

ゴローさんのお子さんが幼い頃に、怪我をしないように角を取ったのが始まりとのことです。

▲ 癒される手触りを表現するために、やすりがけとオイル塗りを何度も繰り返します

「癒される手触り、と名付けたのは購入してくれたお客さんで、『仕事が終わって疲れて家に帰ってから、このテーブルをずっと撫でて癒されています』というレビューをくれたのがきっかけなんです」

傷まで愛してあげてほしい

「確かに、杉は柔らかいから傷はつきやすいけれど、傷も思い出にして愛してあげてほしいなと思うんです。全工程を手仕事で行っているからこそ、手仕事ならではの揺らぎもあります。大量生産では出せない、温もりや味わいを一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです」

 

杉+オイル仕上げの家具は購入後のメンテナンスもしやすく、革をお手入れするように経年変化が楽しめるのだそう。

使っていれば傷もつくし、経年変化もする。素材そのものがもつ自然の良さを全工程手作業で残しているからこそ、時を経て現われるその変化が、愛すべき作り手としての誇りでもあるのだと伝わってきました。

▲ 人気のためこたつも登場! 冬はここから動けなくなりそうです

「杉には個性があって、仕入れた段階ではそりがあったり、厚みに違いがあったりと、扱うのが難しい素材でもあります。心配性なので作っているときは不安なんです、本当に上手く出来上がるのか。天然素材なので当然のことなんですが、扱うのが難しい素材が入ってくることもあります。そこを一つひとつ調整しながら作っていく。そんな大変さがあるからこそ、家具が完成した瞬間は気持ちがよく、やりがいがあります。そのビフォーアフターが好きですね。

素材から向き合うことで、大量生産では作れない手仕事の揺らぎを表現できると思っています。」

——今後、挑戦していきたいことはありますか?

「木製家具だけではなく、床や壁だったり、素材にアイアンを取り入れてみたり、植物なんかもいいし…… ライフスタイル全般を提案できるように展開していきたいと思っています。

『最高! と思える空間づくりを頼むなら、85ファーニチャーに』って、思ってもらえるような存在になりたいです。

 

『好きなことで食えるほど甘くない』とよくいわれますが、これよくわかるんです。

「自分の好き」よりも「お客さんの好き」にフォーカスされていないと、お金を出していただけないので。

ある時耳にした、『好きなじゃないことで食えるほど甘くない』という言葉。

これも本当にそうだよなって思いました。

割り切ってやっている人って本気で好きでやってる人には勝てないですよね。

 

家具を製作しお届けすることを通じて、たくさんお客さんに喜んでいただき、自分の好きなことで食っていけるように頑張っていきたいと思います。」

▲ ゴローさんの好きな植物が彩るギャラリー

インタビューを終えて

今回、工房に直接お邪魔してお話をお伺いさせていただいたのですが、一台のちゃぶ台を完成させるまでの工程の多さに驚きました。作り手の想いや背景を知ることで、より作品への愛着が深まると改めて実感したインタビューでした。

 

また、クリエイターの皆さんの「ものづくりで生きていくこと」にCreemaが微力ながらお役に立てていることを知ることができて、嬉しい気持ちとともに、もっともっと力になれる存在にならなければ、と身の引き締まる思いでした。

▲ 写真左:クリーマ 會津、右:85ファーニチャー・八反田(ゴロー)さん。癒されるちゃぶ台と一緒に

85ファニチャーさんでは、手に取りやすい価格に抑えた「Wild&Free」シリーズや、組み合わせ自由なユニットボックス、折りたたみ可能なリラックスチェアなど、さまざまな家具が展開されているので、ぜひギャラリーページをのぞいてみてください!

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