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職人が紡ぐ圧倒的技術力と透明感…若きガラス職人の工房にかける想い|兒島硝子さん

職人が紡ぐ圧倒的技術力と透明感…若きガラス職人の工房にかける想い|兒島硝子さん

クリーマが運営する、クリエイターの創造的な活動を応援することに特化したクラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」。あらゆるジャンルのクリエイターが、アイデアや夢、想いを応援してくれる仲間を募り、プロジェクトに挑戦しています。

 

読みものでは、Creema SPRINGSで実施中の魅力的なプロジェクトをピックアップして、クリエイターの想いや夢とともにみなさまにご紹介します!

本日ご紹介するのは、吹きガラスの技法で食器を中心に制作する、兒島硝子さんのプロジェクト。静岡県沼津市に移住して自身の工房を持ち、ガラスの美しさをより多くの人に届けたいという想いを、兒島さんの言葉でお届けします。

静岡の豊かな自然の中でガラス工房をオープンしたい

初めまして。吹きガラスという技法を使って食器を主に制作している、ガラス職人の兒島佳祐と申します。

20歳でガラスの仕事を始め、都内の工房で10年修業し、現在は自分の活動をするために退職してフリーとなり、お金を払って窯を借りるレンタル作家という形で制作活動をしています。

店舗を持っていないので作品を知ってもらうために、全国のクラフトのイベントに出店したり、展示会やネット販売をして活動をしています。

 

この度、一念発起して家族で静岡の沼津港のちかくで吹きガラス工房に建てる事としました。工房を建てるには沢山の設備が必要なため、ぜひ皆様のお力をお借り出来ればと思い、プロジェクトを立ち上げました。

吹きガラスとは、機械に頼らず一つひとつ手仕事で作っていく技法で、ガラスの分野の中では一番ポピュラーであり、一番難しい技術です。

皆さんは、ガラスに透明度の違いがあるのをご存じでしょうか? 黄色っぽいガラスや青みがかったガラスなどあり、僕が使うのはその中でも透明度の高いガラスのため、光の通し方が一味違います!

職人仕込みの伝統的な技術と今まで学んできた技を駆使して、自由度の高いガラス作りをしています。

僕は、ガラスの仕事を始めた頃から、自分の工房を持つ事を夢見ていました。今は窯を持たない作家さんが多いです。何故なら窯を持つことで自由に動けない事や、綺麗に保つため管理が大変で、24時間熱し続けるため燃料代もかかるというデメリットが大きいのです。

 

堅物な僕は、「ガラス屋がそんなんじゃダメだろう!めんどくさいのも上等!」と心を燃やしています。

僕の目的は「吹きガラスを知ってもらうこと」。買って貰って、ありがとうございました!で終わりではなく、どんな工夫がされていてどんな思いで作った物なのか、そして値段にご納得いただくために説得出来る場所が、制作現場を直で見られる"工房"だと考えています。

近年は新型コロナウィルスが流行り、ガラス界でも多くの工房が施設を畳む事を余儀なくされました。

そんな中でガラス工房を開くなんて無謀な事ではありますが、工房があれば、借りながらでは作ることの難しいプロダクトやガラスを知ってもらうための体験も出来る! どうしてこんなにガラスが高いのかも、直接見て知っていただくことで説得力のあるご説明ができるはず! 自分に合った設備でやりたい企画がまだまだあります!

 

残念ながら、機械で作っていると思っている人も多くいるほどの吹きガラスの認知度は低く、ただシンプルなコップを作る事の難しさも知られていません。それらを広めていくには、どうしても自分の工房が必要不可欠なのです。

透明ガラスの魅力

ガラスは「素直」だと僕は思います。

正しく扱わないと形は成形できないし、均等に熱して回さないと綺麗に空気すら入りません。

何が悪かったのか、自分のやり方が間違っている所をガラスは教えてくれる。

 

直接触る事も出来ないのに、遠心力、表面張力、重力を巧みに操って作りあげていくなんて、他の工芸にはなかなかないのではないでしょうか。

僕は最初からガラスが出来たわけではありません。何なら、苦手な分野でした(笑)他の金工や木工の方が向いていると先生に言われるくらいに。

それでもこの道を選んだのは「出来なかったから」です。

 

ガラスを学べる専門学校に入って1年で僕が出来たのは、ヤクルト1本も入らないような分厚く重いおちょこくらいでした。他の同期はたくさん水の入りそうな綺麗なグラス……もしこの時、他の工芸のようにある程度形にすることが出来ていたなら、きっと簡単だなと思って辞めていたかもしれないと今も思います。

 

1年でこれしか出来ないなら、10年たっても上手くならないかもしれない。

でももし、続けて上手くグラスが作れたなら今迄と違う自分に出会えるんじゃないか……? そう思ってこの道を続けてみる事にしました。

ガラスは他の工芸とは違ってすぐには上手くはなりません。ただガラスを巻く、という事が出来るのにも1年かかる事もあります。10年やってやっと基礎が出来るほど、遠く長い道です。

ガラスには200を超える色があり、透明な色ガラスと不透明な色ガラスと分かれていて、全てを揃える人おそらくはいません。

僕はその中でも透明なガラスを魅力と考えているので、透明な色のガラスをメインに手掛け、デザインはシンプルで美しく、生活に馴染んでいけるようなガラス作品を目指しています。

吹きガラスは一瞬を操る技術なので、1秒長く焼くか焼かないかが作品の良し悪しを決めます。

とはいえ、秒数を数えてるわけもなく、全ては経験と勘です。

 

直接触れない吹きガラスは、他の工芸と違って止めて大きさを測ったりゆっくり眺める事が出来ません。大きさを揃えるのも経験で全て決めます。色合いも形の変形具合もです。

僕の作品は色々な技法を使います。中には一つを極めてそれだけで作品作りをする作家さんもいます。

悪く言えば作風が決まっていないとも言えますが、僕は作りたいものに必要な技法を足しているだけなので、個展を開けば、まるでグループ展のように何人か作家が集まったような雰囲気の作品展が楽しめます。

プロジェクトに踏み切った理由

ガラスは1300℃になる「窯」の中で巻き出す事から始まります。

そのままだと冷めて硬くなってしまうため、約1000℃の「だるま」と呼ばれる炉で温め、何度も焼き直しながら成形していきます。

そして出来上がったガラスを冷まし保存する「徐冷炉」と呼ばれる炉も使います。

完成したグラスはガタなどがないように底を削り安定させます。そのための「加工機」も必要です。

 

それら一つひとつの機械はかなり高価で、とても個人作家一人では集めきれる代物ではありません。そうした設備のための資金も、クラウドファンディングに踏み切った理由の一つでした。

 

僕は生まれも育ちも神奈川県川崎市です。30年近く住んでいる地元に工房を構えて地元に恩返しが出来れば……と考えていましたが、なかなかガラス工房の出来る土地とは巡り合えません。諦めかけていたそんな時、条件もなかなか良い土地と出会いました。

昔から、深海水族館にデートに行ったり、朝市を見に単身バイクでツーリングに行ったり、海を眺めたくて海岸に寄ったり……思えば何かと惹かれていた沼津。仕事で静岡の方々とふれ合う事が多くなり、県民の暖かで穏やかな雰囲気がとても好きで、毎年静岡に仕事で行くのが楽しみになるほどでした。土地を見つけたとき運命的なものを感じ、親を説得して、静岡県民になることを決めました。沼津へは、退職を機に僕の工房の建設を手伝ってくれるということで、家族総出での引っ越しとなりました。

 

実は、もし工房を持てなければガラスを辞めるという選択もありました。ただ、辞めるということ諦めるということは今まで応援してくれた友人、親族、お客様の思いをも無にしてしまう事です。

 

僕には、中学校から苦楽を分かち合ってくれた大事な友達が3人います。彼らはどんなに下手なグラスをあげても、仕事を辞めたいと泣いた日も、不器用な僕だと誰より知っていて「お前なら出来る!」と言ってくれます。それを信じて続けていくと「ここで買ってからガラス集め始めました」とか「ファンになりました」と言ってくださる方が増えてきて、そういった方々に出来る恩返しは工房を持ち制作活動を続けていくことだと思わされました。

 

沼津にはもちろん知り合いはいません。頼れる友人とも離れ、知らない街で交友も一から家族で作り直しです。それでもいつか「沼津のガラス屋さん」として地元といえるくらい地域に馴染めたらと思います。

僕にとって工房とは「恩返し」の一つの形なのです。

ガラスのさまざまな魅力が活きた、リターンの作品

今回のプロジェクトのリターンには、工房での制作体験のチケットのほか、さまざまなガラス作品をご用意しております。そのいくつかを、お写真でご紹介します!

モールドグラス

モールドグラス
兒島硝子の代表作のモールドグラスです。
ボコボコした模様が特徴で、光に当てると美しく輝き、丸いフォルムが可愛らしく容量も350mlがきっちり入ります!
シンプルな形でたっぷりと入る大きさは、アイスコーヒーやお酒もより美味しく楽しめるはず。

カットグラス

カットグラス
切子ガラスの様なカットが入り、半透明に光が透けるのが特徴のカットグラス。
カッコ良さと美しさを兼ね備えたグラスは、ご自身の夜のひと時にも、贈り物にも喜ばれています。

爽青シリーズ ぐい呑み/片口

爽青シリーズ ぐい呑み/片口
金箔、銀箔の輝きは折り紙付きですが、”銅箔”を皆さんはご存じですか?
他の箔では出来ない表情と吸い込まれそうな美しく爽やかな青い世界で、食材を引き立てます。
澄んだお酒を入れた銅箔の表情は、写真では伝わらぬ美しさです。

めんだこちゃん(一輪挿し)

めんだこちゃん(一輪挿し)
沼津といえば深海水族館!地域に馴染むもの第一弾として制作しました!
愛くるしいフォルムと表情がきっとあなたを癒してくれます。
頭からお花を挿せる一輪挿しとなっています。

兒島硝子の、これからのこと。

今や100円均一でも器が手に入る時代で、器や料理にこだわる人も少なくなりました。100均は確かに素晴らしい! ですが、晩酌のグラス一つでも手作りのガラスに変えてみてください! 落とす氷の音が変わり、口当たりや飲み物、食べ物が輝きます。いつもと違った器を使うことによって気分も上がり食卓に花を添えてくれます。

 

よく通りすがりに足を止めて僕のガラスを見ては「綺麗ですね」と微笑んでくれる方がいますが、たしかにガラスも綺麗かもしれませんが、それを言葉に出来るその方の心が綺麗なのです。

見える人には、それがお金にもガラクタにも見えるのですから……ガラスでは政治を変える事も命を救うことも出来ませんが、人の心を助ける事は出来ます。

 

僕がガラスを続け、工房を持つ事で、たくさんの方に観光がてら僕の作品を見に来てもらい、それをきっかけにガラスについて知ってもらえる場所になったらと願っています。

そういった場所があることでガラスを楽しんだ思い出が残っていた子供たちや大人がガラスに興味を持ってこの世界に入ってくれる事もあるかもしれない。

そんな「繋がり」が生まれたら嬉しいです。

https://www.creema-springs.jp/projects/kojimaglass
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