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「今、私が会いたい人」化学の知識と独創性から生まれた「生体メモリ」 | レジン作家・ニケルxp さん

「今、私が会いたい人」化学の知識と独創性から生まれた「生体メモリ」 | レジン作家・ニケルxp さん

こんにちは。クリエイターに特化したクラウドファンディングサービス「Creema SPRINGS」のキュレーションを担当しているヤーネスです。

8月に入社したばかりの私ですが、Creema愛用歴は6年。日頃から作品をチェックしている中で、ずっと気になっていたクリエイターさんがレジン作家のニケルxpさんです。

 

ニケルxpさんの作品が気になった理由は、まず何といっても作品のビジュアルインパクト。なぜここにお魚が? 蝉の抜け殻が? そんな圧倒的なオリジナリティーに一目で魅了されてしまいました。

生体メモリ(64GB)

ニケルxpさんのギャラリーを拝見するとどうやらレジンに関する書籍も手がけているようで、私の謎は深まるばかり。これは直接お話を聞いてみるしかない! と思い、今回ニケルxp・林さんにインタビューをさせていただきました。

▲ ニケルxp・林さん。ご自宅の工房にて制作中にお話を伺った様子。学生時代から科学の研究をされていて、お話をお聞きしていても ”クリエイター” というよりも “博士” という言葉が似合う印象の方でした。

小学生で元素にハマる。小さなころからずっと興味のあった化学。

▲ 一つひとつ手作業で、ミリ単位で作るニケルxpさんの表情は真剣そのもの

小さなころからずっと化学が好きで、大学では工学部で応用化学を専攻されていたという林さん。

クリエイター名「二ケルxp」の由来も、もちろん金属元素の「ニッケル」が由来。小学生のころに元素にハマり、そのときの出席番号がたまたま28番だったこともあり、28番目の元素のニッケルをもじって「ニケル」にしたのだそう。

 

「そのころから自分の元素はニケルだったんです(笑)xpは、explorer(エクスプローラー)= ”探検者” からとっています。世の中にはまだまだ僕の知らないことや体験したことのないことがたくさんあると思い、いろいろ探検して自分のものにしていくという気概も込めています」

大学時代に勉強の傍らレジン技術について研究し、今の道へ

▲ 作業場には、研究や制作で使用する薬品や資材がひしめいています

——透明感溢れるレジンの中に、魚や植物、そのほか個性あるものたちを標本のように入れ込むスタイルが特徴のニケルxpさん。その作風に至ったきっかけは何だったのでしょうか。

「大学では工学部で応用化学を専攻していました。研究の中でレジン(透明樹脂)を使うことは一般的で、うずらの卵の標本などを作っていたんです。

そんな背景もあって、レジンを使って何か作れるものはないのか? とふと思い、柄の部分が透明なレジン製のUSBメモリを作ってみたのが最初のきっかけです」

透明USBメモリ(32,64GB)

▲ 透明USBの制作の様子

Twitterでバズったことがきっかけでロングセラーになった「生体メモリ」

中でもロングセラーとなり、ニケルxpさんをレジンの職人たらしめるきっかけとなった作品が「生体メモリ」。透明なレジンのUSBの中に、魚(いわし)が標本のように入っているのがインパクト大な作品です......! その見た目の印象強さはもちろん、泡一つ入っていないレジンの完成度と技術の高さも、ニケルxp・林さんが作るからこそ。

生体メモリ(64GB)

この「生体メモリ」が、2018年・大学2年生のころにTwitterでバズり、今でも人気のロングセラー作品となりました。

 

「『生体メモリ』はまず最初に名前を思いつきました。USBの使用目的から、“中に生き物を入れて、脳に記憶させる” というコンセプトで作ってみたら面白いんじゃないか? と思ったんです。

本当に生き物を入れるわけにはいかないので、結果的に “にぼし” や “いりこ” を入れることになりました。ちなみに、中に入れている小魚は実際の生物の樹脂封入標本と同じ製法で脱脂・乾燥・防腐処理を施しているので、腐ることはありません」

——なぜUSBにお魚を入れようと思ったんですか?

「大学時代、専攻科目の勉強の傍らレジンについて研究し、作品のアイデアを考えるようになりました。“いりこ” はもともとはカタクチイワシやキビナゴとして生きていた生物ですし、レジンに入れると標本みたいだな…… って単純に思ったんです。

よく、何でこんなところに魚を入れようと思ったの? と聞かれるのですが、自分としてはこの発想はごく自然なことでした」

作品づくりの動機は、喜んでほしいという純粋な思いから。

——海外で生物学者をしている義兄夫婦にこの生体メモリをギフトで送ったことがあるんですけど「日本にはこんなにユニークなものがあるの!?」と、とても喜んでくれました。

「ギフトに選んでくださったなんて嬉しいです。確かに初めて見たら、びっくりしますよね(笑)

 

そういえば以前、Creemaのご購入者さまから『子どものプレゼントに買ったんですが、子どもが蓄光石を一晩中握りしめて寝るんです』とコメントをいただいたことがあります。自分の作品が誰かの笑顔に繋がっていたり、何かの役に立っているんだなって思えて嬉しかったです」

 

このときのコメントを読んでハッとした、というニケルxpさん。

何年も個人でクリエイター活動をやっていると、日々の制作に追われて初心を忘れてしまうこともありますが、子どものころから大好きだった化学を通して作品を届け続けるのは、「人に喜んでもらえるのが嬉しい」という、とても純粋な思いからでした。

蓄光石Vol.3「星屑」Phosphorescence Epoxite (Stardust)

「僕は “人に喜んでもらえること” がいちばん嬉しくて、それが制作のやりがいになっています。このコメントを読んで、この気持ちを忘れず、これからも新しいことに取り組んで行こうと改めて思いました」

クラウドファンディング「Creema SPRINGS」がきっかけで制作を始めたレジンテーブル

ニケルxpさんは、ちょうど今、レジンでできたテーブルの制作を手がけていらっしゃいます。

このテーブル、なんと天板が全面透明なレジンでできており、桜のアーティフィシャルフラワーが贅沢に入れ込まれた作品。テーブルの前にいながらいつでもお花見気分が味わえる特別な作品です。

桜のテーブルVol.1「桜吹雪」(ローテーブル)

「レジンを使ったテーブルは、Creema SPRINGSがサービスとしてスタートする際の初回プロジェクトとして公開したものです。

レジンの透明度を最大限に活かした作品を多く手掛けてきた僕の個人的な感覚から、レジンのみで天板部分を作れば、よりレジンの透明度が活きた美しい作品になると考えていました。

 

ただ、一般的にレジンのみで大きな作品を制作するのは、発熱による樹脂の分解や反りを抑える技術が必要なことに加え、生産設備・機材の面でも特殊なものが多く必要になるため難しいとされています。日本はもちろん、世界的にもあまり例がないことから躊躇していましたが、クラウドファンディングをきっかけに制作することにしました」

レジンテーブルの制作を見学させていただきました!

▲ 選りすぐりのレジンを適正温度に温め、1グラム単位で計測します。
▲ 体積や薬品の重さを計算しながら制作が進みます。その様子はまるで化学の実験のようでした。
▲ 冷めないうちに攪拌。徐々に透明になっていきます。
▲ レジンを流し込み桜のアーティフィシャルフラワーを閉じ込めている様子。これがテーブルの天板になります。
▲ 時間をかけて硬化させながら、何度も同じ工程を繰り返し数週間かけて完成します。気温によって固まる時間が異なるため、全て計算式を作っているのだとか。

レジン最大の魅力は自由に創造ができること

レジンを使って、長年独自の作品づくりを手がけているニケルxpさん。そこまでしてレジンを探求し、レジンに魅了され続ける理由とはなんなのでしょう。最後に、ニケルxpさんが考えるレジンの魅力について、お聞きしてみました。

 

「レジンと性質や見た目が似ているものにガラスがあります。ただ、ガラスはかなり高温にしないと形状が変わらないのですが、レジンは比較的低温で成形することができます。

だからこそ、中にさまざまなものを閉じ込めることができますし、加工の自由度が高く自分の想像した通りの形に創造することができます。この “形状付与性” が最大の魅力であり、僕の創作意欲を沸きたてる要因です。

これからもレジンでほかの人が作っていないようなものを制作していきたいです!」

▲ 写真左:ニケルxp・林さん、右:クリーマ ヤーネス。ニケルさんいち押し、購入者さまから嬉しいコメントをいただいた「蓄光石(星屑)」と。

インタビューを終えて

今回はニケルxpさんの制作現場を見学しながらインタビューさせていただいたのですが、独自で考案した発明品が数多くある、専門的かつクリエイター魂溢れる異空間に本当に驚きました!

▲ 実際の制作現場

今回のインタビューは、クリーマに入社する前から作品を購入して気になっていたクリエイターさんと直接お話ができる貴重な経験でした。

これからクリーマの一員として、そしてクラウドファンディング「Creema SPRINGS」の担当として、日々ものづくりの現場で生まれる課題や悩みなどをクリエイターの皆さまと少しでも近い目線で解決できるようなプロジェクトに取り組めたら、そう改めて思いました。

 

クリエイターに特化したクラウドファンディング「Creema SPRINGS」では、ほかではなかなか見られない、クリエイターの新しい一面がみられるかもしれません。ぜひ、チェックしてみてください。

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